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所長ブログ

譲渡費用について(抵当権抹消登記費用)

2025-02-24
カテゴリ:税務会計,所得税法,会計・財務分析,税理士
所得税の確定申告の季節となりました。
私たち税理士にとっての最繁忙期となります。

確定申告期において頭を悩ませる、または、気を遣うものとして「譲渡所得」というものがあります。

主に土地や建物を売買することによる利益を計算するのが譲渡所得です。
譲渡所得については
・納税額が大きくなりがちであること
・通常の会計とはかけ離れた考え方をすること
・特例が多いこと
などから所得税の中でも難しい部類に属するのがこの譲渡所得です。
ワンミスが命取りになったり、また、知識不足により通常より多い納税を負担させる可能性があるというところから慎重な処理を行います。
譲渡所得については
売った金額△買った金額△譲渡にかかった経費
という単純な算式にて所得を計算しますが、この譲渡にかかった経費というものが「譲渡経費」となります。

譲渡経費とはその名の通り
「土地や建物を売るために直接かかった費用」
のことを指します。

ちなみに所得税法においては基本的に直接的な因果関係を求められることが多いです。
事業所得における経費の概念も直接的な因果関係が求めれらます、ここが個人と法人の大きな差ともいえるでしょう。

土地や建物を売却する際に抵当に入っているものは売買をすることができません。
従って、売買の際に入っている抵当権については抹消の手続きをとることとなります。

この抵当権を抹消するために要した費用、これが譲渡費用になるかですが、
答えは「ならない」
です。

一見抵当権が設定されたままでは売買をすることができないため、土地や建物を売却するために必要な経費に思えるかも知れませんがこれは譲渡経費にはなりません。
なぜ抵当権抹消にかかる費用が譲渡費用に該当しないかといえば
「直接的な因果関係」
という考え方となります。

なぜ抵当権が設定されたかと言えば土地建物の購入の際などに融資を受ける際の担保のために抵当権が設定されること通常です。

譲渡対象の土地建物に抵当権が設定されているか否かについては融資を受ける際の金融手段としての抵当権と考えた際、その譲渡対象の土地建物に抵当権が設定されるのは土地建物の効用を高めるものでもなく、単なる取得手段の過程における抵当なのです。

現金で買うか、借入で買うか、これは売買の際には関係のないものと考えます。

そう考えた際に抵当権の抹消登記費用は対象譲渡に対して直接的な因果関係はなく、金融上の間接的な因果関係に過ぎないと考えます。

もし、間接的な因果関係についても譲渡経費とするならば融資の際の諸費用その他についても譲渡経費と考えることも拡大解釈すればできることとなります。

ここで私が伝えたいのは所得税法における概念としての直接的な因果関係の必要性とそれを加味した際の抵当権抹消費用の譲渡経費としての可否についてです。

一般的な「譲渡に必要な経費」とは少し異なる点もあります
この所得税法における考え方がまた譲渡所得を難解なものにしているのだと感じます。

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