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所長ブログ

税務申告書等の控えへの収受日付印の押捺廃止について

2024-12-05
カテゴリ:税務会計,税理士
チェック重要
収受日付印押捺廃止の影響:税理士
令和7年1月から、申告書等の控えについて収受日付印の押捺を行わないことになります。
これはいわゆる税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の一環ということで、電子申告及び電子納税の更なる普及を促すものでしょう。

現在、書面による申告書の提出の際には申告書等の提出用と控え用の2部を提出し、控え用に収受日付印の押捺をいただいておりました。

今後は申告書等の提出用のみの提出となり、電子申告以外の場合は税務署において開示請求を行うことにより、提出した申告書等の内容を確認できるとのことですが、写しの交付の場合は1ヵ月程度のタイムラグが出るということ、また、手数料がかかること、法人税の申告書等には利用できない等の制限も多くあります。

収受日付印の押捺の廃止で一番恐ろしい点が「税務署と納税者とで情報をシェアできない点」です。
例えば後日、税務署より「提出がありません」との連絡があった時、確実な情報は税務署側にしかなく、納税者及び税理士側には収受日付印の押捺が無いためいくら話しても証拠能力が足りず、どんな状況であれ納税者及び税理士側が負けてしまうことです。
基本的には税務署側の処理に間違いはないのだと信じておりますが、この収受日付印による情報のシェアができないということは税理士側としては非常に恐ろしいものです。

税理士業界においてはベンダーソフトの進化もあり、電子申告についてはかなり普及してきているのではなかろうかと推測しますが、電子納税についてはクライアント側の考え方などもあり、普及度としてはいまいち伸び悩んでいる印象もあります。

税務行政についての電子化、DX化についてもできる限りの協力はしているところではありますが、どうしても書面による提出というものは出てしまいます。

・準確定申告などそれだけのために相続人に利用者識別番号を取得していただく必要があるケース
・スポットによる申告(スポットによる贈与税申告、譲渡所得等)

これらについてはまだまだ書面提出の余地があり、また、できれば収受日付印をいただきたいところです。

また、相続税申告については別途資料が莫大であり、電子申告には不向きな税目ということもあり、電子化は進んでいないところかと思いますが、相続税申告については税額及び報酬額も多額になる傾向もあるため、仕事完遂の証としての収受日付印を押捺いただきたいところです。
相続税については税務行政に協力をした上でのシステム上の問題というところでもあります。
収受日付印押捺廃止の影響:その他
個人による申告、自分や家族の申告であればむしろ収受日付印などそれほど気にするところではないのかも知れません。

ただ、新しく事業を始めた個人事業主、新しく法人成りをした法人など、いきなり税務行政の世界に顔を出すような方について、いきなり収受日付印がなく、電子申告を勧奨するのはまだ早いのではなかろうかと思います。
新しく事業を始めたところの届出関係については非常にデリケートなところもあり、例えば青色申告の届出や消費税関係の届出、インボイス関係の届出については日付がとても重要となるところです。

例えば収受受付印のない届出をお持ちになって税理士に相談に来たケース
税理士としては収受受付印がない場合は開示請求による確認が必要不可欠となります。
最初の最初から税理士などのプロがついているケースは稀であることを考えると新しく始めるような方については注意が必要となります。
※税務署側としてはリーフレットに提出日付を記載するなどの策を打ち出してはおりますが、税理士がその日付を鵜呑みには当然できません。

また、商工会、商工会議所、農協などを通じた事業主
これも電子申告は苦手とする窓口です

これら経由もかなりの混乱を招く恐れはあります。

事業開始届出などを前提とする銀行の口座開設、補助金や借入金の申請など
ここも大きな混乱を招く恐れがあります。


DX化とは聞こえの良いものかも知れません

税理士業界はそこまでDX化が進んでいる業界とは思えず、むしろ遅れている業界だと思います。
そこで仕事完遂を証明する収受日付印の押捺廃止となれば大きな混乱を招くのは必須で、まだ、ここでブログを書いている私は若い方でいまだ電子申告に抵抗のある税理士やシステム化に抵抗のある税理士も少数ではありますが存在します。

とにかく税務行政の策が良いか悪いかは別として、ついていくことを止めたら仕事ができなくなる恐ろしい社会になるのかもしれません。
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